GEZANが主催するフェス、全感覚祭19に行ってきた。
9月21日、早朝から新幹線と電車を乗り継ぎ、
大阪・堺までやってきた。
前日までは雨予報、
進路によっては台風も来るかもしれないという
不安もあったが、蓋を開けてみれば
曇りのち快晴という、絶好のフェス日和。
堺駅からテクテクと歩き、会場に近づいてくると、
徐々に行き交う人も多くなり、
高架下をくぐったところで、
突然空気が変わったのを感じた。
入場ゲートこそ無いが、
そこが全感覚祭の入り口だった。
全感覚祭は投げ銭のフェス、入場料は無料である。
参加した人が自由に料金を決めて、
善意でカンパするスタイル。
しかも今年はフードも無料。
最初は耳を疑った。
フードが無料って、どういうことやねん!!
思わず笑ってしまったが、彼らはマジだった。
詳しくはマヒトゥ・ザ・ピーポーの
ステイトメントを読んでほしい。
このステイトメントを読んで、
行かない理由は無くなった。
こんなにも無謀かつ夢のようなフェスが、
果たしてきちんと成立するのか、
この目で確かめ、体験したいと思った。
まず最初に出会ったのは、移動販売のクレープ屋。
列に並び、自分の番が来ると
ストロベリークレープを注文した。
普通であればここで金銭のやりとりがあるものだが、
フードフリーを謳う全感覚祭という街では、
丁寧に焼き上げた生地と
クリームがたっぷり入ったクレープを、
「どうぞ」と無償で提供してくれる。
一口食べて驚いた。
めちゃくちゃ美味しい・・・。
お店で食べる味と全く遜色ない、いや、
むしろこんな美味しいクレープには
なかなか出会えないレベルの味、
そしてそれが無料で提供されるということに、
感動を覚えた。
その後もカレーや鉄板焼き、
赤出汁に温州みかんetc・・・
いろいろ食べたが、どれも本当に美味しかった。
これらの料理に使われた食材は、
イベントのコンセプトに共感する
農家の方達から提供されたものであり、
誰かが長い時間をかけて育ててきた
食べ物をいただいていることを思うと、
自然と感謝の気持ちが生まれた。
考えてみれば当然のことなのだが、
食べ物が自分の元まで運ばれるまでに、
生産者をはじめ、多くの人を仲介し、
ようやく自分の目の前までたどり着く。
生産者の顔が見えることで、
今自分が食べている食材に対して、
ありがたみをひしひしと感じた。
会場を歩いていると、壁や地面のあちこちに
大きくプリントされた写真が飾られていた。
路上にアート空間が現出し、
日常と溶け込む様がすごく良かった。
おそらくこの日一番多くすれ違ったのは、
GEZANのメンバーだと思う。
そのくらい、メンバー4人は
会場内をチャリンコに乗って走り回り、
出演者のライブを見たり、関係者に声をかけたり、
注意事項をアナウンスしたり、
募金を募ったり、炊き出しを手伝ったり、
会場を所狭しと縦横無尽に駆け回っていた。
食べ物の列に並んでいる時、
七尾旅人と折坂悠太も一緒に並んでいた。
アーティストも一般人も関係なくフードの列に並び、
ケータリングを受け取るというのは、
このフェスならではのボーダーレスなコンセプトを
象徴しているようにも思える。
これまで何度も旅人さんのライブは観てきたが、
この日は筋ジスの友人、相羽くんをステージに上げて、
詩の朗読と弾き語りのセッションを聴かせてくれた。
いつもながらアドリブでの対応力がすごい。
計算ではなく、その場の空気を読んで、
自身の表現に昇華させるセンスは唯一無二だ。
リハからそのままフリースタイルに突入した
鎮座DOPENESS。
独特なダンスと繰り出すフロウに釘付けになった。
面白く、かつ、カッコいい。
この後に続く折坂悠太やTHE NOVEMBERSも
すごく良いライブだった。
しかし、最終的にGEZANに全て持っていかれた。
リハの音出しもそこそこに、一気に曲になだれ込む。
一曲目の「Absolutely Imagination」が鳴り始めた瞬間、
ぎゅうぎゅうに詰まった観客が、
ものすごい勢いで波打ち始める。
突き上がる拳、叫び出す歌声、クラウドサーフィン。
まさに熱狂の渦を見た。すごい光景だった。
「今日はみんなどんな1日でしたか?
別にみんなが一緒になる必要はなくて、
最高な人がいてもいいし、
最高じゃない人がいてもいいと思うけど、
とりあえず今日みたいな日が奇跡だとか伝説だとか
そういうふうに言われるようじゃダメだと思ってて
こういう日が日常になるように・・・」
こんなMCを、マヒトゥ・ザ・ピーポーは語っていた。
かなりぶっ飛んでる。
ぶっ飛んでるけど、この全感覚祭を敢行した彼らは、
きっと本気でそう思っている。
ロックバンドはまだ夢を見れる。
こんな気持ちにさせてくれる
バンドに出会ったのは久しぶりだ。